本記事では、心技体充実の兄を追うバンタム級戦士・井上拓真選手について、戦績やファイトスタイル、特徴など、拓真のその強さについて解説していきます。
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プロフィール
11月15日 両国国技館
— 井上 拓真 Takuma Inoue (@takumainoue_122) September 15, 2023
元IBF世界スーパーフライ級チャンピオン
ジェルウィン・アンカハスと
初防衛戦
4団体統一に向けて必ず勝つ
応援よろしくお願いします!#boxing #井上拓真 pic.twitter.com/qb6C4uZNRS
名前 | 井上拓真 |
生年月日 | 1995年12月26日 |
デビュー | 2013年12月6日 |
出身地 | 神奈川県座間市 |
身長 | 164cm |
リーチ | 163cm |
タイプ | 右ボクサーファイター |
階級 | バンタム級 (53.52キロ) |
兄・尚弥が放出した世界王座を獲得するため、バンタム級戦線で戦っている。
2018年12月30日、CPフレッシュマートとの無敗対決に勝利し、WBC暫定王座を獲得して兄弟世界王者を達成した。2019年11月7日、正規王者ノルディーヌ・ウバーリとの統一戦で敗れ、正規王者獲得に失敗し初黒星を喫した。その後は日本人選手相手に勝利を重ね、国内最強を証明してきた。
初の正規王者獲得
2023年4月8日、有明アリーナで行われた寺地拳四朗vsアンソニー・オラスクアガ戦の前座で、井上拓真はWBA世界バンタム級王座決定戦に臨んだ。これは井上尚弥が返上したベルトをかけた試合であり、井上拓真にとってはウバーリ戦以来の正規王者となるチャンスであった。同級2位のリボリオ・ソリスと激突し、12回にわたる激闘の末、判定勝ちで見事に王座を獲得した。
しかし、井上拓真は試合内容に満足していないようである。圧倒的なテクニックで試合を支配し、何度もカウンター攻撃を繰り出したが、ダウンを奪うことはできなかった。彼の技術が光る試合であったが、観客にとってはやや物足りない展開だったことは否めない。
アンカハスをKOし初防衛
2024年2月24日、両国国技館で行われたWBA世界バンタム級タイトルマッチで、井上拓真は同級9位のヘルウィン・アンカハスと対戦し、9回44秒でKO勝ちして初防衛に成功した。この試合は、元スーパーフライ級チャンピオンのアンカハスを相手にした井上拓真の初防衛戦として大きな注目を集めた。KO率が低いことに悩んでいた可能性もある中で、9度の防衛に成功した強豪アンカハスをKOできたことは素晴らしく、井上拓真にとって大きな自信となったのではないだろうか。この試合は、両者の実力がぶつかり合う非常に激しいものであり、特に井上拓真がKOという形で試合を決めたことは大きな意味を持った。
幼少期から兄・尚弥と共に磨き上げたテクニックの高いボクシング、スピード、攻防のセンスを武器に兄の返上したバンタム級4団体チャンピオンの獲得に向けて日々努力している。
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戦績
アマ戦績 57戦52勝(14KO)5敗
プロ戦績 22戦20勝(5KO)2敗
世界戦戦績 6戦4勝(1KO)2敗
※2024年10月13日時点
試合実績
戦 | 日付 | 勝敗 | 時間 | 内容 | 対戦相手 | 国籍 |
1 | 2013年12月6日 | 〇 | 6R | 判定3-0 | 福原辰弥(本田フィットネス) | 日本 |
2 | 2014年4月6日 | 〇 | 8R | 判定3-0 | ファーラン・サックリン・ジュニア | タイ |
3 | 2014年9月5日 | 〇 | 2R 0:51 | KO | チャナチャイ・ ソーシアムチャイ | タイ |
4 | 2014年12月30日 | 〇 | 8R | 判定3-0 | ネストール・ナルバエス | アルゼンチン |
5 | 2015年7月6日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | マーク・アンソニー・ヘラルド | フィリピン |
6 | 2015年12月29日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | レネ・ダッケル | フィリピン |
7 | 2016年5月8日 | 〇 | 2R 1:46 | TKO | アフリザル・タンボレシ | インドネシア |
8 | 2016年9月4日 | 〇 | 10R | 判定3-0 | フローイラン・サルダール | フィリピン |
9 | 2017年8月30日 | 〇 | 10R | 判定3-0 | 久高寛之(仲里) | 日本 |
10 | 2017年12月30日 | 〇 | 10R | 判定3-0 | 益田健太郎(新日本木村) | 日本 |
11 | 2018年5月25日 | 〇 | 1R 2:14 | KO | ワルド・サブ | インドネシア |
12 | 2018年9月11日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | マーク・ジョン・ヤップ(六島) | フィリピン |
13 | 2018年12月30日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | ペッチ・CPフレッシュマート | タイ |
14 | 2019年11月7日 | × | 12R | 判定0-3 | ノルディーヌ・ウバーリ | フランス |
15 | 2021年1月14日 | 〇 | 9R 2:25 | 負傷判定3-0 | 栗原慶太(一力) | 日本 |
16 | 2021年11月11日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | 和氣慎吾(FLARE山上) | 日本 |
17 | 2022年6月7日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | 古橋岳也(川崎新田) | 日本 |
18 | 2022年12月13日 | 〇 | 8R 2:48 | TKO | ジェイク・ボルネア | フィリピン |
19 | 2023年4月8日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | リボリオ・ソリス | ベネズエラ |
20 | 2024年2月24日 | 〇 | 9R 0:44 | TKO | ジェルウィン・アンカハス | フィリピン |
21 | 2024年5月6日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | 石田匠(井岡) | 日本 |
22 | 2024年10月13日 | × | 12R | 判定0-3 | 堤聖也(角海老宝石) | 日本 |
ファイトスタイル・能力
井上拓真は、ボクサーファイタータイプの右オーソドックススタイルだ。
攻守ともに高いテクニックを持つバランス型の万能ボクサーである。しかし、テクニックとは逆に、タフネスや客を魅了するような派手さには少し物足りなさを感じる。現日本バンタム級界では敵無しの素晴らしい選手であるのは間違いないが、やはりあの兄・尚弥の存在がちらつく。兄弟であるため兄と比較されることも多くあるが、拓真には拓真の可能なボクシングスタイルを貫くべきだろう。
オフェンス
井上拓真のオフェンス技術は極めて高い。基本に忠実な左ジャブ、右ストレート、両フックがスピードと的中率の高さで相手を圧倒する。特にインボクシングで見せる右ショートアッパーは兄譲りの巧みさがあり、スピードを活かしたカウンター攻撃も見事だ。
その一方で、一発のパワーに欠けるため、KO率は低い。拓真の試合は派手さに欠けるが、基本に忠実で洗練されたボクシングを展開し、的確なヒットを重ねることで戦局を支配し、判定勝ちを収めることが多い。非常に玄人向けのボクシングスタイルで、見どころはそのテクニックと戦術にある。
ディフェンス
井上拓真のディフェンス技術は集中力に左右され、調子の良い時には圧倒的な防御を見せる。基本的な動き、バックステップやウィービング、ダッキング、ショルダーブロックなどが洗練されており、非常に高いテクニックを持つ。しかし、ノルディーヌ・ウバーリやリボリオ・ソリスのような派手な強打や変則攻撃を武器とする相手と戦うと、被弾が増えることが多い。また、ロープ際での打ち合いでは劣勢に陥ることもしばしば見られる。
リボリオ・ソリス戦ではバッティングによる目のカットで集中力を失い、防御が甘くなり被弾が増加。ウバーリ戦ではスピードに対応しきれず、正面からの攻撃でダウンを喫した。高いスタミナとテクニックを持つ拓真が、常に高い集中力を維持し、的確な防御を意識することが今後の課題となるだろう。
ウバーリ戦の敗戦
井上拓真がまさかの判定負けとなった、2019年11月7日、ノルディーヌ・ウバーリとのWBC世界バンタム級王座統一戦。敗戦してしまった原因は何だったのか解説していく。
拓真のダウン
まずひとつ言えるのは、やはり4ラウンドの拓真のダウンだ。拓真のワンツーに合わせたウバーリの強烈な左カウンターが炸裂。よろめきながら尻もちをつきダウンした。立ち上がってから足を使い逃げ切ったのは良かったが、やはり拓真への印象はかなり悪くなってしまった。
手数の差
拓真は決して各ラウンド、悪いわけではなかった。基本的な綺麗な右ストレートは、ウバーリの顔面を何度も捉えていた。しかし、それに対するウバーリの対応が拓真を飲み込んでいたのだ。
拓真が攻撃を当てれば、それに対してウバーリは2、3発の攻撃を返す。拓真が攻撃を出してこないタイミングでは、当たらずとも多くの連打を浴びせ続けた。たとえ拓真の方がダメージを与えていたとしても、ウバーリがこの戦い方を継続させていけば、ジャッジはウバーリ優勢と付けてしまうのではないだろうか。実際、ヒット数だけを見れば、そこまで大差はないはずだが、判定は120対107、117対110、115対112とウバーリにフルマークを付けたジャッジもいるほどの圧倒的な大差で負けている。
今後、井上拓真に黒星が付かないようにしていくには、やはりこのジャッジへの見せ方というのも意識する必要があるだろう。
大胆な攻撃
この試合で最も拓真に足りなかったポイントは攻撃の大胆さにある。いわゆる客を魅了するような派手な攻撃のことだ。拓真はショートパンチを細かくヒットさせるが、対するウバーリは細かいパンチに加えて、大振りの大胆な攻撃も見せていた。大振りがヒットしなければ良かったが、これが当たってしまってはやはり印象がぐっと悪くなる。心技体充実している拓真に物足りなさを感じてしまうのは、大胆で派手な攻撃を打たないところに原因があるのではないだろうか。
アンカハス戦に向けた記者会見
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