本記事では、2023年12月26日におこなわれた運命の一戦、世界スーパーバンタム級WBC・WBO・IBF・WBAスーパー主要4団体統一タイトルマッチ、井上尚弥VSマーロン・タパレスの試合結果をレビューしていきます。
よろしくお願いいたします。
両者データ比較
四団体王座統一戦まで3週間を切りました!
— 井上尚弥 Naoya Inoue (@naoyainoue_410) December 6, 2023
ボクシングに絶対はない。
だからこそ追求する。
お楽しみに!!#Inoue_Tapales#四団体王座統一戦#Lemino pic.twitter.com/m2jvOjKdzP
井上尚弥 | VS | マーロン・タパレス |
1993年4月10日 | 生年月日 | 1992年3月23日 |
2012年10月2日 | デビュー | 2008年7月18日 |
神奈川県座間市 | 出身地 | トゥボッド(フィリピン) |
165cm | 身長 | 163cm |
170cm | リーチ | 165cm |
右ボクサーファイター | タイプ | 左ボクサーファイター |
ライトフライ級 (48.97キロ) スーパーフライ級 (52.16キロ) バンタム級 (53.52キロ) スーパーバンタム級 (55.34キロ) | 階級 | バンタム級 (53.52キロ) スーパーバンタム級 (55.34キロ) |
世界4階級制覇 主要4団体統一(バンタム級) 主要2団体統一(スーパーバンタム級) | 実績 | 世界2階級制覇 主要2団体統一(スーパーバンタム級) |
81戦75勝(48KO)6敗 | アマ戦績 | 50戦以上 |
25戦25勝(22KO)無敗 | プロ戦績 | 40戦37勝(19KO)3敗 |
20戦20勝(18KO)無敗 | 世界戦績 | 3戦2勝(1KO)1敗 |
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タパレスのファイトスタイル
タパレスはボクサーファイタータイプのサウスポースタイルだ。
好戦的な面を持ちつつ、一発の速攻もある。徐々に牽制し、相手の出方をうかがうような冷静なペースメイクも可能。総合的にみて、オフェンス・ディフェンスの両面でバランスの取れた選手である。
小柄ながら相手の間合いに入り込むことができる思い切りの良いメンタルと伸びのある左ストレート、強力なパワーなど、高いボクシングテクニックを持っているボクサーである。
井上尚弥のファイトスタイル
井上尚弥はボクサーファイター、右オーソドックススタイルだ。
スピード、パワー、テクニックの全てが超一流な上に空間支配能力が高く、時には冷静に、時には予想外の派手な攻撃もできるボクサー。
オフェンスのバリエーションが多くあり、キレのあるコンビネーションパンチや高速カウンターが非常に魅力的だ。特に左フック、左ボディは世界№1と言えるだろう。
また、ディフェンステクニックも、相当高い。
スウェーバックや高速バックステップ。太ももの筋力が優れており、そのボクシングに特価した体つきは、井上尚弥選手の努力の賜物だと言える。
スウェーバックや高速バックステップ。太ももの筋力が優れており、ステップの幅が大きくとてつもない速さだ。ボクシングに特価した体つきは、井上尚弥の努力の賜物であるのだろう。
試合レビュー
1ラウンド
立ち上がりは両者慎重な間合いだった。タパレスは、両手ガードをしっかりとおこない重心を低くし、バックステップによって中間距離をキープする。
一方の井上は、相手の出方を伺うような冷静な姿勢。ジャブやボディ攻撃を散らして打ち、時折、深く踏み込んだボディ攻撃を狙って打っていた。
両者クリーンヒットは無かった。
2ラウンド
このラウンドでは、両者ともにギアを上げてきた。
まず、タパレスは、1ラウンド目よりも、フィリーシェル構えの後ろ重心の体勢に切り替え、井上の攻撃を後方に受け流すディフェンシブスタイルにシフトした。
井上は、1ラウンド目よりも近い距離間をキープしつつ、ガードの上でもお構いなく、ジャブストレートのワンツーコンビネーションを強振していった。その他にもカウンター、ボディなど、色々なパンチを組み合わせて打っていた。タパレスの攻撃に対する反応速度が異常に速く、また、井上の攻撃スピード、手数、威力と圧倒的に勝っていることはこのラウンドで既に感じられた。
3ラウンド
強固な両手ガードをキープするタパレスに対し、井上の強力な攻撃を浴びせ続け、さらに井上の手数が増していく。
残り時間 2分
井上は、攻めてこないタパレスに対し打ってこいと言わんばかりのノーガードアピールをする。あえてロープを背に自ら移動し、タパレスの攻撃を誘発させる姿勢を見せる。井上に若干の余裕が生まれてきた証拠だろう。チャンピオン相手にこの余裕は、やはり異次元の強さである。
おそらくタパレスが隙を中々みせないため、あえて攻撃を打たせることで、カウンターの隙を生ませることを狙っていたのだろう。
4ラウンド
井上の方が圧倒的に手数が多く、ダメージを与えている攻撃数も多いが、タパレスが少し攻撃の手数を増やしてきた。
何度かタパレスのボディやフックが当たったようにも見えたが、井上には全く効いていない。
ボディの打ち合いの展開。両者が両手ガードでインファイトに持ち込みボディ攻撃を打ち合う。ここでもやはり圧倒していたのは井上だった。パンチの精度、キレが明らかにタパレスを勝っている。
残り時間 24秒
ここでついに明確に試合が動いた。井上の得意の左フックがタパレスの顎を捕らえた。よろけるタパレスにガードの上からコンビネーションパンチを次々に叩き込む。残り14秒、たまらず両手、両膝をつきタパレスがダウンした。10カウント以内に立ち上がり、その後すぐにゴングがなった。
5ラウンド
開始早々、井上が仕掛けた。一気に距離を詰めて、強烈な連打を浴びせた。しかし、さすがのタパレスもこれには極端なディフェンスで防いだ。
その後、すぐにタパレスも反撃に出るが、井上には全く効いていないようだ。井上もすかさずその反撃に更に強烈な反撃をやり返した。
タパレスの右フックがヒットする場面もあったが、そんな些細なことは気にならないほど、井上のアグレッシブな攻撃が目立った。
6ラウンド
互いがガードの上へ攻撃を打ち合うアグレッシブな展開から始まった。凄まじい打ち合いだが、互いにディフェンスが完璧にできており、両者被弾はなかなかしなかった。
残り時間 2分
井上の右ストレートがヒットするが、タパレスはバックステップで流しており、まともには効かなかったようだ。
残り時間 45秒
井上の強力なコンビネーションによってガードの上から打たれたタパレスが大きく吹き飛ばされる。しかし、タパレスはひるむことなく交戦する。素晴らしいタフネスである。
7ラウンド
早期決着の前評判が多くあったが、後半戦にまで突入した。
両者さらにギアを上げ、激しい打ち合いに発展していく。
しかし、このラウンドでは、タパレスの良い攻守が目立っていた。井上の顔を突き上げさせるほどのジャブ、ひっついてのボディ攻撃をいくつかヒットさせ、ディフェンスでは後ろ重心、フィリーシェル、ショルダーブロックで井上の攻撃を上手く交わしている。井上の攻撃がなかなか当たらなくなっていた。
8ラウンド
互いのディフェンスが非常に良い。両者アグレッシブな攻めをおこなうが、両者完璧なディフェンスで交わし続ける。
まさに4団体統一戦というのにふさわしい素晴らしい技術戦である。
井上のスピードのある攻撃に対し、タパレスも負けじと好戦しているような展開が続いた。しかし、やはりリードしているのは井上だと感じられた。井上の攻撃の精度が非常に高く、タパレスがバランスを崩されるようなシーンが何度もみられた。
9ラウンド
相変わらず井上の攻撃は素晴らしい。タパレスが一方的にならないように攻撃を仕掛けるも、井上の攻撃の方がはるかに上をいっている。
残り時間 1分2秒
ロープ際にいるタパレスに強烈な右ストレートが命中する。しかし、受け流していたのか、タパレスは攻撃をすぐに打ち返す。
残り時間 22秒
ここでも井上の右ストレートがタパレスを捕らえた。それでもタパレスはうち返そうとしたが、さらに、カウンターの右ストレートが命中する。
効いてないように見えるが、きっと耐えているだけなのだろう。タパレスが非常にタフなボクサーだと感じられたラウンドだった。
10ラウンド
明らかにポイントで負けているタパレス。ラウンド開始早々から井上に攻撃を放つ。
しかし、井上は、バックステップ、スウェー、両手ガードにより完璧に対応していく。
残り時間 2分15秒
井上の右ストレートがタパレスの顔面を捕らえた。ひるんだタパレス。
残り時間 2分11秒
井上の右ストレートがタパレスのコメカミ付近を捕らえた。後ろによろめいたタパレス。まさかのそのまま両膝をつき、ダウン。前のラウンドから多くの右ストレートをもらっていたため、そのダメージが蓄積されていたのだろう。ついにタパレスの心をへし折った。10カウント数えるもタパレスは立ち上がれなかった。
10ラウンド 1分2秒
井上尚弥のKO勝利により4団体統一戦の幕を閉じた。
本当に両者とも素晴らしい試合を観せてくれた。前評判では、井上の早期決着が期待されていたが、それを覆すほどタパレスはテクニックが高く、そして非常にタフな選手だった。
フルトンの時よりも井上尚弥への恐怖心というものがタパレスからは見られず、本当に素晴らしく勇敢なファイターだと感じられた。
しかし、そんなタフなファイターをKOしてしまうほど、それも圧倒的な内容の勝利。やはり井上尚弥はモンスターだ。パワー、テクニック、スタミナ、メンタル、そして高いファイトIQ。彼のボクサーとしての能力は、計り知れないものがある。
この勝利により、スーパーバンタム級世界主要4団体王座獲得しました。また、史上2人目となる2階級での4団体統一を達成するという偉業を成し遂げました。
世界のボクシング界の歴史に刻まれるような完璧な試合だったと思います。この感動の試合を届けてくれた井上尚弥選手とタパレス選手に心より感謝申し上げます。井上尚弥選手、タパレス選手、本当にありがとうございました。
スーパーバンタム級主要選手
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