ボクシング界に燦然と輝く伝説的存在がいる。それがマニー・パッキャオだ。彼の名前を知らない者は、もはや世界のボクシングファンには存在しないと言っても過言ではない。フライ級からスーパーウェルター級まで、実質10階級を制覇した破格のキャリア、そして史上2人目となるメジャータイトル6階級制覇という偉業を成し遂げた唯一無二のファイターである。この記事では、貧困から這い上がり、世界の頂点に立ったパッキャオの魅力と偉業、そしてその凄まじい戦いぶりを徹底的に掘り下げていく。
プロフィール
BREAKING: Manny Pacquiao’s charitable foundation will use @Shibtoken‘s ‘Shibarium’ L2 to conduct fundraising and operational activities.#SHIB #ShibaInu #memecoin pic.twitter.com/fYfxm4Lkg4
— BSCN (@BSCNews) November 15, 2023
名前 | エマヌエル・ダピドゥラン・パッキャオ |
生年月日 | 1978年12月17日 |
デビュー | 1995年1月22日 |
出身地 | フィリピン |
身長 | 166cm |
リーチ | 170cm |
タイプ | 左ボクサーファイター |
階級 | ライトフライ級 (48.97キロ) フライ級 (50.80キロ) スーパーバンタム級 (55.34キロ) フェザー級 (57.15キロ) スーパーフェザー級 (58.97キロ) ライト級 (61.23キロ) スーパーライト級 (63.50キロ) ウェルター級 (66.68キロ) スーパーウェルター級 (69.85キロ) |
実績 | 世界6階級制覇 |
名言
簡単にこなせないトレーニングをしろ。もっと強くなるためには、それをより困難にするべきだ。俺は自分のトレーニングと試合だけに集中している。
生涯報酬・年収
パッキャオの生涯報酬はおよそ5億ドルと言われている。日本円にすると約550億円である。
年収は試合数や相手選手の人気などでファイトマネーが変化するため波があるが、ここでは世界戦を始めた年から大きい収入があったと仮定し平均値を推測する。生涯報酬から計算するとパッキャオの平均年収は、およそ2100万ドル(約23億円)である。
ファイトマネー
パッキャオのファイトマネーで最も高額だったのは、2015年のフロイドメイウェザーとおこなったWBA・WBC・WBO世界ウェルター級王座統一戦だ。その試合は判定でメイウェザーの勝利となったが、パッキャオはファイトマネーとして1億5000万ドル(約180億円)を受け取った。(PPV売上を含む。)また、フロイドメイウェザーはこの試合でファイトマネーとして2億1000万ドル(約252億円)を受け取っており、この記録は歴代最高のファイトマネーとなっている。
戦績
アマ戦績 64戦60勝4敗
プロ戦績 72戦62勝(39KO)8敗2分
世界戦戦績 26戦18勝(10KO)6敗2分
※エキシビションを除く
プロ戦績は72戦62勝(39KO)8敗2分。KO率は高く、しかも数々の世界王者を相手にこの数字を維持してきたこと自体が驚異的である。特筆すべきは、その勝利の多くが上の階級に挑戦しながらのものであるという事実だ。通常、階級を上げることでスピードやパワーは通用しなくなる。だがパッキャオは逆に、階級を上げるごとにスピードを維持し、パンチ力さえ増していった。彼の身体はボクシングの進化そのものである。
試合実績
戦 | 日付 | 勝敗 | 時間 | 内容 | 対戦相手 | 国籍 | 備考 |
1 | 1995年1月22日 | 〇 | 4R | 判定3-0 | エドムンド・イグナシオ | フィリピン | プロデビュー戦 |
2 | 1995年3月18日 | 〇 | 4R | 判定3-0 | ピノイ・モンテホ | フィリピン | |
3 | 1995年5月1日 | 〇 | 6R | 判定3-0 | ロッキー・パルマ | フィリピン | |
4 | 1995年7月1日 | 〇 | 2R | TKO | デール・ダシアート | フィリピン | |
5 | 1995年8月3日 | 〇 | 6R | 判定3-0 | フラッシュ・シンバジョン | フィリピン | |
6 | 1995年9月16日 | 〇 | 3R | KO | アルマン・ロルシ | フィリピン | |
7 | 1995年10月7日 | 〇 | 8R | 判定3-0 | ロリト・ラロア | フィリピン | |
8 | 1995年10月21日 | 〇 | 2R | TKO | レナト・メンドネス | フィリピン | |
9 | 1995年11月11日 | 〇 | 3R | TKO | ロドルフォ・フェルナンデス | フィリピン | |
10 | 1995年12月9日 | 〇 | 10R | 判定3-0 | ローランド・ツユゴン | フィリピン | |
11 | 1996年1月13日 | 〇 | 5R | 負傷判定 | リト・トレホス | フィリピン | |
12 | 1996年2月9日 | × | 3R 0:29 | KO | ルスティコ・トーレカンポ | フィリピン | |
13 | 1996年4月27日 | 〇 | 10R | 判定3-0 | マーロン・カリーリョ | フィリピン | |
14 | 1996年5月20日 | 〇 | 4R | TKO | ジョン・メディナ | フィリピン | |
15 | 1996年6月15日 | 〇 | 4R | TKO | バート・バティラー | フィリピン | |
16 | 1996年7月27日 | 〇 | 2R | TKO | イッポ・ガラ | インドネシア | |
17 | 1996年12月28日 | 〇 | 2R 1:51 | TKO | 李成烈 | 韓国 | |
18 | 1997年3月8日 | 〇 | 1R 1:56 | KO | マイケル・ルナ | フィリピン | |
19 | 1997年4月24日 | 〇 | 1R 1:04 | KO | 李旭基 | 韓国 | |
20 | 1997年5月30日 | 〇 | 6R | TKO | アリエル・オーストリア | フィリピン | |
21 | 1997年6月26日 | 〇 | 5R 2:46 | KO | チョクチャイ・チョクビワット | タイ | OPBF東洋太平洋フライ級タイトルマッチ |
22 | 1997年9月13日 | 〇 | 10R | 判定3-0 | メルビン・マグラモ | フィリピン | |
23 | 1997年12月6日 | 〇 | 1R 1:38 | KO | タノンディ・シンワンチャー | タイ | OPBF防衛1 |
24 | 1998年5月18日 | 〇 | 1R 2:59 | TKO | 寺尾新(八王子中屋) | 日本 | |
25 | 1998年12月4日 | 〇 | 8R 2:54 | TKO | チャチャイ・ダッチボーイジム | タイ | WBC世界フライ級タイトルマッチ |
26 | 1999年2月20日 | 〇 | 3R 2:52 | TKO | トッド・マケリン | オーストラリア | |
27 | 1999年4月24日 | 〇 | 4R 2:45 | KO | ガブリエル・ミラ | メキシコ | WBC防衛1 |
28 | 1999年9月17日 | × | 3R 1:32 | KO | メッグン・3Kバッテリー | タイ | 体重超過により王座剥奪 |
29 | 1999年12月18日 | 〇 | 2R | TKO | レイナンテ・ハミリ | フィリピン | WBCインターナショナルスーパーバンタム級王座決定戦 |
30 | 2000年3月4日 | 〇 | 4R | KO | アーネリル・バロテリオ | フィリピン | WBCインターナショナル防衛1 |
31 | 2000年6月28日 | 〇 | 1R | TKO | 蔡昇坤 | 韓国 | WBCインターナショナル防衛2 |
32 | 2000年10月14日 | 〇 | 10R 1:48 | TKO | ナデル・フセイン | オーストラリア | WBCインターナショナル防衛3 |
33 | 2001年2月24日 | 〇 | 5R 1:06 | TKO | 千里馬哲虎(千里馬神戸) | 韓国 | WBCインターナショナル防衛4 |
34 | 2001年4月28日 | 〇 | 6R 2:49 | KO | ウェタヤ・サクムアンクラン | タイ | WBCインターナショナル防衛5 |
35 | 2001年6月23日 | 〇 | 6R 0:59 | TKO | レーロホノロ・レドワバ | 南アフリカ共和国 | IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチ/2階級制覇 |
36 | 2001年11月10日 | △ | 6R 1:12 | 負傷判定1-1 | アガピト・サンチェス | ドミニカ共和国 | IBF・WBO世界スーパーバンタム級王座統一戦/IBF防衛1 |
37 | 2002年6月8日 | 〇 | 2R 1:09 | TKO | ホルヘ・エリセール・フリオ | コロンビア | IBF防衛2 |
38 | 2002年10月26日 | 〇 | 1R 2:46 | TKO | ファーブラコム・ラキットジム | タイ | IBF防衛3 |
39 | 2003年3月15日 | 〇 | 5R 1:52 | TKO | エリクザーン・イェシュマンベトフ | カザフスタン | |
40 | 2003年7月26日 | 〇 | 3R 0:48 | KO | エマヌエル・ルセロ | メキシコ | IBF防衛4 |
41 | 2003年11月15日 | 〇 | 11R 2:56 | TKO | マルコ・アントニオ・バレラ | メキシコ | リングマガジン世界フェザー級タイトルマッチ |
42 | 2004年5月8日 | △ | 12R | 判定1-1 | ファン・マヌエル・マルケス | メキシコ | WBA・IBF世界フェザー級タイトルマッチ |
43 | 2004年12月11日 | 〇 | 4R 1:26 | TKO | ファーサン・3Kバッテリー | タイ | IBF世界フェザー級挑戦者決定戦 |
44 | 2005年3月19日 | × | 12R | 判定0-3 | エリック・モラレス | メキシコ | WBCインターナショナルスーパーフェザー級王座決定戦 IBA世界スーパーフェザー級王座決定戦 |
45 | 2005年9月10日 | 〇 | 6R 2:59 | TKO | ヘクトール・ベラスケス | メキシコ | WBCインターナショナルスーパーフェザー級王座決定戦 |
46 | 2006年1月21日 | 〇 | 10R 2:33 | TKO | エリック・モラレス | メキシコ | WBCインターナショナル防衛1 |
47 | 2006年7月2日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | オスカー・ラリオス | メキシコ | WBCインターナショナル防衛2 |
48 | 2006年11月18日 | 〇 | 3R 2:57 | TKO | エリック・モラレス | メキシコ | WBCインターナショナル防衛3 |
49 | 2007年4月14日 | 〇 | 8R 1:16 | KO | ホルヘ・ソリス | メキシコ | WBCインターナショナル防衛4 |
50 | 2007年10月6日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | マルコ・アントニオ・バレラ | メキシコ | WBCインターナショナル防衛5 |
51 | 2008年3月15日 | 〇 | 12R | 判定2-1 | ファン・マヌエル・マルケス | メキシコ | WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ/3階級制覇 WBC王座獲得 |
52 | 2008年6月29日 | 〇 | 9R 2:24 | KO | デビッド・ディアス | アメリカ合衆国 | WBC世界ライト級タイトルマッチ/4階級制覇 |
53 | 2008年12月6日 | 〇 | 8R 終了 | TKO | オスカー・デ・ラ・ホーヤ | アメリカ合衆国 | |
54 | 2009年5月2日 | 〇 | 2R 2:59 | KO | リッキー・ハットン | イギリス | IBO・リングマガジン世界スーパーライト級タイトルマッチ |
55 | 2009年11月14日 | 〇 | 12R 0:59 | TKO | ミゲール・コット | プエルトリコ | WBO世界ウェルター級タイトルマッチ/5階級制覇 WBO・WBCダイヤモンド王座獲得 |
56 | 2010年3月13日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | ジョシュア・クロッティ | ガーナの旗 ガーナ | WBO防衛1 |
57 | 2010年11月13日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | アントニオ・マルガリート | メキシコ | WBC世界スーパーウェルター級王座決定戦/6階級制覇 |
58 | 2011年5月8日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | シェーン・モズリー | アメリカ合衆国 | WBO防衛2 |
59 | 2011年11月12日 | 〇 | 12R | 判定2-0 | ファン・マヌエル・マルケス | メキシコ | WBO防衛3 |
60 | 2012年6月9日 | × | 12R | 判定1-2 | ティモシー・ブラッドリー | アメリカ合衆国 | WBO王座陥落 |
61 | 2012年12月8日 | × | 6R 2:59 | KO | ファン・マヌエル・マルケス | メキシコ | |
62 | 2013年11月23日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | ブランドン・リオス | アメリカ合衆国 | WBOインターナショナルウェルター級王座決定戦 |
63 | 2014年4月12日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | ティモシー・ブラッドリー | アメリカ合衆国 | WBO世界ウェルター級タイトルマッチ |
64 | 2014年11月22日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | クリス・アルギエリ | アメリカ合衆国 | WBO防衛1 |
65 | 2015年5月2日 | × | 12R | 判定0-3 | フロイド・メイウェザー・ジュニア | アメリカ合衆国 | WBA・WBC・WBO世界ウェルター級王座統一戦 WBO王座陥落 |
66 | 2016年4月9日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | ティモシー・ブラッドリー | アメリカ合衆国 | WBOインターナショナルウェルター級王座決定戦 |
67 | 2016年11月5日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | ジェシー・バルガス | アメリカ合衆国 | WBO世界ウェルター級タイトルマッチ |
68 | 2017年7月2日 | × | 12R | 判定0-3 | ジェフ・ホーン | オーストラリア | WBO王座陥落 |
69 | 2018年7月15日 | 〇 | 7R 2:43 | TKO | ルーカス・マティセー | アルゼンチン | WBA世界ウェルター級タイトルマッチ |
70 | 2019年1月19日 | 〇 | 12R | 判定3-0 | エイドリアン・ブローナー | アメリカ合衆国 | WBA防衛1 |
71 | 2019年7月20日 | 〇 | 12R | 判定2-1 | キース・サーマン | アメリカ合衆国 | WBA世界ウェルター級王座統一戦 WBA防衛2 |
72 | 2021年8月21日 | × | 12R | 判定0-3 | ヨルデニス・ウガス | キューバ | WBA世界ウェルター級王座統一戦 |
パッキャオは6つの階級で世界タイトルを獲得している。具体的には、フライ級(50.8kg)、スーパーバンタム級(55.3kg)、スーパーフェザー級(58.9kg)、ライト級(61.2kg)、ウェルター級(66.6kg)、スーパーウェルター級(69.8kg)である。これらの階級制覇を、わずか十数年のうちに成し遂げた。彼はライトフライ級デビューから20キロ近く増量しながらもスピードとパワーを保ち続けた、まさに常識を打ち破る存在だった。
マルコ・アントニオ・バレラ戦では、キャリアのターニングポイントを迎えた。完全アウェイの中、名王者を打ちのめし、世界に名を知らしめた。エリック・モラレス三部作では、敗北から学び、再戦で完全勝利するという成長力を見せつけた。ファン・マヌエル・マルケス戦では4度の激闘を繰り広げ、ボクシング史上屈指のライバル関係として語り継がれている。オスカー・デ・ラ・ホーヤ戦では階級を大幅に上げての挑戦で、引退寸前だった相手を一方的に打ちのめし、衝撃的勝利を飾った。そしてアントニオ・マルガリート戦では、スーパーウェルター級の実力者を粉砕し、6階級制覇を成し遂げた歴史的試合となった。
獲得タイトル
- WBC世界フライ級王座
- IBF世界スーパーバンタム級王座
- WBC世界スーパーフェザー級王座
- WBC世界ライト級王座
- WBO世界ウェルター級王座
- WBC世界スーパーウェルター級王座
- WBO世界ウェルター級王座
- WBO世界ウェルター級王座
- WBA世界ウェルター級レギュラー王座
- WBA世界ウェルター級スーパー王座
エキシビション実績
戦 | 日付 | 勝敗 | 時間 | 内容 | 対戦相手 | 国籍 | 備考 |
1 | 2002年8月20日 | 〇 | 3R | 判定 | ヘスス・サルード | フィリピン | |
2 | 2022年12月10日 | 〇 | 6R | 判定3-0 | DK・ユー | 韓国 |
ファイトスタイル・能力

マニーパッキャオは、サウスポースタイルのボクサーファイタータイプだ。
マニー・パッキャオのファイトスタイルを一言で表すならば、それは「爆発的な多層攻撃を持つアサルトファイター」である。ただ前に出て打ちまくるだけの選手とは根本的に違う。彼はスピード、パワー、角度、フェイント、リズムの緩急、スタミナ、プレッシャー、心理戦――これらすべてを高度に組み合わせた戦略的殺傷マシーンだった。以下にその異常なまでの完成度を、攻撃、防御、戦術の3点から詳細に分析する。
オフェンス
パッキャオの攻撃の最大の武器は、尋常ならざるスピードと、そこから生まれる手数の洪水だ。単に速いだけでも、打つだけでもない――彼の真骨頂は、この「スピードと手数の融合」にある。1秒の間に相手が何をしているのか、そして自分がどれだけ攻撃できるのかを正確に計算しながら、一気に5発、6発と畳み掛けるラッシュを繰り出す。その攻撃はもはや「連打」ではなく、速度の暴力そのものだ。
この異常なスピードを軸とした戦いぶりから、パッキャオはしばしば“神速”と称される。その名に恥じないほど、彼の動きには一切の無駄がなく、相手のガードの上からでも時間差で崩していく芸術性と殺傷力を兼ね備えている。
特に印象的なのが、左ストレートを打ち込む際の爆発力。踏み込みと同時に角度を変え、わずかに姿勢をズラすことで、パンチの軌道を読ませずにヒットさせる。しかもそれが単発では終わらない。1発目の着弾と同時に、次の3発がすでに放たれている。その速さは、対戦相手に「パンチを見てから避ける」ことを許さず、まさに“先に打たれて後に気づく”時差式の攻撃となっている。
利き手ではない右手も、単なるジャブでは終わらない。軽打、タッチ、スナップショットのような多彩な右で相手のリズムを壊し、注意を分散させた隙に、必殺の左を叩き込む。これにより相手は、いつ、どこから、どちらの手が飛んでくるのかを把握できず、防御の基準点そのものを失ってしまうのだ。
ディフェンス
一見、パッキャオはディフェンシブな選手には見えない。事実、被弾も少なくない。だがその実態は、“喰らいながら上回る”高度なカウンター哲学に基づいている。
彼はピーカブーやシェル系のガードではなく、足の出入りと上体のスリッピング、そして相手の“意図の読み”によって回避を行う。タイミングと角度のズラしによって、「当たっているように見えてダメージを受けない」局面が非常に多い。これは経験と直感が融合した防御感覚であり、数字に現れない「試合の支配力」の源でもある。
さらに特筆すべきは、“ディフェンスから即座に攻撃に転じるスイッチ能力”である。被弾直後にその場で反撃に転じる瞬発力、そして反撃そのものが的確なカウンターになっている点。これはまさに、相手の攻撃を“利用して得点する”防御の究極形といえるだろう。
戦略的なファイター
パッキャオは「感覚派」に見えて、実は極めて戦略的なファイターである。彼のスタイルは、対戦相手ごとに微妙に変化しており、その中でも共通しているのは“初回で相手の反応を引き出し、2〜3Rで傾向を掴み、4R以降に仕留める”という流れだ。
そして、彼はサウスポーであることを最大限に活かしながらも、しばしばオーソドックスのような軸で攻撃を仕掛けることで、相手のディフェンスを完全に錯乱させる。相手はサウスポー対策をしてきたはずが、気がつけば右構えからパンチを食らっているという状況に陥る。
また、フットワークも独特で、単に前後に出入りするだけでなく、半円を描くような斜めのステップイン、あるいは前足で切り返す“変則ローテーション”によって、常に相手の“利き手の逆側”にポジションを取る。これにより相手の主力パンチは封じられ、同時に自分の左がフル活用できる構図が出来上がる。
心理面でも優れており、試合中にあえてギアを落として相手に「流れが来た」と錯覚させ、そこで一気に畳み掛けるなど、まさに“戦場の心理学者”と言っても過言ではない。
最強のスタミナ
マニー・パッキャオの最大の武器の一つが、常軌を逸したスタミナである。1ラウンドから全開で飛ばしながらも、12ラウンド終盤に差し掛かってなお手数もフットワークも一切落ちない。普通の選手がバテる時間帯に、逆に連打のテンポを上げて攻め込む姿はまさに異常である。
彼のトレードマークである“スピードと手数の融合”を支えているのは、この無尽蔵のスタミナに他ならない。練習では数十キロのランニングを日課とし、1日20ラウンド以上のスパーリングを平然とこなす。フレディ・ローチも「マニーのスタミナに太刀打ちできる選手はいない」と語っているほどだ。
そしてこの体力は単に“耐える”ためではない。終盤にラッシュを仕掛けて試合を破壊する、攻撃的スタミナこそが彼の真骨頂だ。12ラウンド目にしてギアを上げる姿に、多くの名王者が心を折られてきた。
パッキャオの凄さ
史上最多タイとなるメジャー6階級制覇、これは偶然ではなく、計算された努力と異常なレベルの精神力が生んだ結果である。さらに彼はプロボクサーでありながら現役政治家でもあり、フィリピンの上院議員を務め、貧困問題や教育改革、福祉事業にも尽力してきた。ボクシングの世界で頂点に立ち、同時に自国民の未来も支えるという生き方は、他に類を見ない。
加えて、慈善活動にも熱心であり、低所得者向け住宅建設、医療支援、教育奨学金の設立など、社会貢献に対する姿勢も徹底している。これは彼が本当に貧困から這い上がってきたからこそ、持ち得た使命感なのだろう。
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