ボクシングファンの皆さん、注目すべき男がいる。日本フライ級戦線の中でひときわ異彩を放つ存在矢吹正道である。
圧倒的なパンチ力と、幾多の試練を乗り越えてきた不屈の精神力。かつてWBC世界ライトフライ級王者にまで上り詰めたこの男は、敗戦や大怪我といった逆境を経験しながらも、リングへの情熱を失うことなく、進化を続けてきた。
今回は、そんな矢吹正道のこれまでの戦績、ファイトスタイル、そして今後の可能性に焦点を当て、改めてその魅力を掘り下げていく。フライ級で再び輝きを放つこの男を知れば、ボクシングがもっと面白くなる。リングにすべてを懸ける矢吹正道の軌跡を、いま改めて見つめてみよう。
プロフィール
メキシコ🇲🇽から
— 矢吹正道 (@Yabukimasamichi) March 31, 2025
異国での世界戦‼️
日本でやれるのは
当たり前じゃない‼️
チャンピオンありがとう🤝 https://t.co/WD7FNYJdmF pic.twitter.com/gAAAvYBR9T
リングネーム | 矢吹 正道 |
名前 | 佐藤 正道 |
生年月日 | 1992年7月9日 |
デビュー | 2016年3月27日 |
出身地 | 三重県鈴鹿市 |
身長 | 166cm |
リーチ | 164cm |
タイプ | 右ボクサーファイター |
階級 | ライトフライ級 (48.97キロ) フライ級 (50.80キロ) |
実績 | 世界2階級制覇 |
矢吹正道は1992年12月19日生まれ、滋賀県出身のプロボクサー。身長は約164cm、リーチは約167cm。利き手は右で、オーソドックススタイルを基本とする。ライトフライ級を主戦場としていたが、2024年にフライ級へ転向。階級アップ後も持ち前のパワーと技巧で世界戦線に挑み、2025年、IBF世界フライ級王座を獲得。2階級制覇を成し遂げた。
戦績
アマ戦績 21戦16勝(9KO)5敗
プロ戦績 22戦18勝(17KO)4敗
世界戦戦績 4戦3勝(3KO)1敗
※2025年3月29日時点
矢吹のプロ戦績は上記の通り、KO率は約89%と依然として高く、「和製ノックアウトマシーン」の異名は健在。2023年の左アキレス腱断裂という大怪我からの復帰を経て、2024年にIBFライトフライ級王者となり、2025年には階級を上げてアヤラを破るという快挙を達成。苦難と再起、そして進化を重ねたキャリアが、この栄光を支えている。
試合実績
戦 | 日付 | 勝敗 | 時間 | 内容 | 対戦相手 | 国籍 | 備考 |
1 | 2016年3月27日 | 〇 | 1R 2:29 | TKO | 堀井翔平(トコナメ) | 日本 | プロデビュー戦 2016年度中日本新人王フライ級予選 |
2 | 2016年8月7日 | 〇 | 1R 2:12 | TKO | 中村潔(KUWANA) | 日本 | 2016年度中日本新人王フライ級決勝 |
3 | 2016年11月6日 | 〇 | 1R 1:04 | TKO | 那須亮祐(グリーンツダ) | 日本 | 2016年度全日本フライ級新人王西軍代表決定戦 |
4 | 2016年12月22日 | × | 4R | 判定0-3 | 中谷潤人(M.T) | 日本 | 2016年度全日本フライ級新人王決定戦 |
5 | 2017年3月26日 | 〇 | 1R 0:58 | KO | 金光民 | 韓国 | |
6 | 2017年7月16日 | 〇 | 2R 0:59 | TKO | 平井雅樹(宮崎ワールド) | 日本 | |
7 | 2017年11月26日 | 〇 | 1R 2:27 | TKO | 多田雅(TI山形) | 日本 | |
8 | 2018年4月6日 | × | 1R 1:32 | TKO | ユーリ阿久井政悟(倉敷守安) | 日本 | |
9 | 2018年6月17日 | 〇 | 2R 1:44 | KO | ヒルベルト・ペドロサ | パナマ | |
10 | 2018年9月29日 | × | 8R | 判定1-2 | ダニエル・マテリョン | キューバ | |
11 | 2019年1月27日 | 〇 | 5R 2:20 | TKO | 裴敏哲 | 韓国 | |
12 | 2019年5月1日 | 〇 | 6R 1:20 | TKO | 大保龍斗(横浜さくら) | 日本 | |
13 | 2019年12月15日 | 〇 | 4R 1:53 | TKO | 芝力人(RK蒲田) | 日本 | 日本ライトフライ級最強挑戦者決定戦 |
14 | 2020年7月26日 | 〇 | 1R 2:55 | KO | 佐藤剛(角海老宝石) | 日本 | 日本ライトフライ級王座決定戦 |
15 | 2020年12月26日 | 〇 | 10R | 判定3-0 | 大内淳雅(姫路木下) | 日本 | 日本防衛1 |
16 | 2021年9月22日 | 〇 | 10R 2:59 | TKO | 寺地拳四朗(BMB) | 日本 | WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ |
17 | 2022年3月19日 | × | 3R 1:11 | KO | 寺地拳四朗(BMB) | 日本 | WBC陥落 |
18 | 2022年9月10日 | 〇 | 7R 1:19 | TKO | タノンサック・シムシー | タイ | |
19 | 2023年1月28日 | 〇 | 11R 2:35 | TKO | ロナルド・チャコン | ベネズエラ | IBF世界ライトフライ級挑戦者決定戦 |
20 | 2024年3月16日 | 〇 | 4R 2:41 | TKO | ケビン・ビバス | ニカラグア | |
21 | 2024年10月12日 | 〇 | 9R 1:50 | TKO | シベナティ・ノンティンガ | 南アフリカ共和国 | IBF世界ライトフライ級タイトルマッチ |
22 | 2025年3月29日 | 〇 | 12R 1:54 | TKO | アンヘル・アヤラ | メキシコ | IBF世界フライ級タイトルマッチ |
23 | 2025年11月22日 | フェリックス・アルバラード | ニカラグア | IBF世界フライ級タイトルマッチ |
矢吹正道を語る上で外せない試合がいくつかある。もっとも印象的なのはやはり2021年9月、寺地拳四朗戦での大番狂わせ。世界王者として無敵を誇った拳四朗をTKOで下した一戦は、日本ボクシング史に残るアップセットだった。
また、2024年のノンティンガ戦も見逃せない。2年7ヶ月ぶりの世界戦、しかも大怪我からの復帰戦で、相手を圧倒しての王座奪取。この勝利は、単なる勝ちではなく、彼の執念と魂を見せつけるものだった。
そしてキャリアのハイライトとも言えるのが、2025年3月に成し遂げた2階級同時制覇。IBF世界ライトフライ級王座を保持したまま、一階級上のIBF世界フライ級王者アンヘル・アヤラに挑戦。試合序盤から鋭いカウンターで2度のダウンを奪い、激しい流血戦の末、12回TKO勝ちで王座を奪取。これにより、日本男子としては史上初の2階級同時世界王者となった。
ファイトスタイル・能力

矢吹のファイトスタイルは一言で言えば「獰猛で破壊的」だ。だがその中にも、精密な距離感とクレバーな戦術眼が共存する。ただ前に出て打つだけのファイターではない。相手のペースを奪い、自分の土俵で勝負を進める冷静さを持っている。
中間距離を制圧するジャブと、それに続く的確なカウンター。特に距離の管理には長けており、相手のリズムを寸断しながら、自らのリズムを構築していくスタイルだ。
オフェンス
最大の武器は、重く鋭い右ストレートと左フック。特にカウンターで放たれる右ストレートは試合を一発で終わらせる威力がある。さらに、下から突き上げるようなアッパー、そしてボディへのショットも的確で威力がある。
特筆すべきは連打の鋭さ。畳みかけるときのラッシュは異様な迫力を持ち、相手に反撃の隙を与えない。相手が下がった瞬間に距離を詰めて仕留める殺気を帯びた攻撃が持ち味だ。
ディフェンス
矢吹の防御はオフェンスに比べればやや荒削りではあるが、ブロッキングとフットワークを組み合わせた応用力がある。真正面から打ち合う場面では被弾も多くなるが、その分攻撃を受けるリスクと引き換えに相手の意識を攻撃に集中させ、自らの強打を当てにいくスタイルでもある。
コンパクトなガードと細かいステップワーク、そしてパンチの見切りによって、大ダメージは最小限に抑える。時にリスクを承知で打ち合いに踏み込む“男気スタイル”も、彼の魅力だ。
試合の注目ポイント
ジャブの攻防
この試合の鍵を握るのは、矢吹のジャブがどれだけ機能するか。相手のアンヘル・アヤラはリーチが長く、距離を取って戦うスタイル。だが矢吹のジャブは精度・タイミングともに優れた武器。このジャブで主導権を握れるかが、前半の展開を大きく左右する。
右ストレートのカウンター
矢吹が誇るフィニッシュブロー、右ストレートのカウンターが決まるかどうかにも注目したい。アヤラは左のガードが甘く、ストレート系のパンチが入りやすい傾向がある。リズムを読み切った上で放たれる右の一撃は、試合を決定づける可能性を秘めている。
ボディへの耐性
アヤラは左ボディが得意なファイター。しかも、コンビネーションの中で放つ左ボディはタイミングと威力を兼ね備える。矢吹が中盤以降にこれを受け始めた時、体力の消耗やスピードの減退が生じる恐れがある。ここをどう乗り切るかが、後半戦の鍵となる。
精神力と経験値
矢吹の最大の武器はキャリアそのものだ。世界タイトルを2度獲得し、敗北も怪我も乗り越えてきた。アヤラにとっては初めての日本遠征、未知の環境での戦いになる。その経験の差がプレッシャーのかかった終盤でどう作用するかは見逃せない。
KO率と勝負勘
17勝中16KOの矢吹は、倒しきる力を持つ男だ。一方のアヤラはまだ無敗の18勝。だが、被弾も多く、ダウン経験もある。矢吹の勝負勘とフィニッシュ力が爆発すれば、会場が沸き上がる衝撃的なKO劇も十分起こりうる。
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